現役時 白鳳大のみ合格、
一年後 センター3-3で94%!
須永 君 ≫≫ 法政大(キャリア)/ 太田東高校卒
「現役時代に自己流のやり方で勉強していてダメだったのであれば、勉強姿勢を改善する必要がある気がします。素直にスタッフの方々の助言に耳を傾けて、実行に移せるかどうか。それが、成績が上がる人とそうでない人の決定的な違いだと思います」
かねてからの第一志望に合格し、約半年ぶりに校舎を訪れた須永は、受験時代を振り返りながらそう語った。その語り口は、まるで戦争から無事に帰還した兵隊のように、確かな自信と充実感に満ちていた。
一年間浪人して迎えたセンター本番。英語178点。国語(現古)で150点満点。日本史97点。計94%。
須永は言う。「まぐれというか、ちょっと出来すぎだと思います。自分でも正直何が起きたか分からない、というのがのが正直な感想です」
多少の恥ずかしさを含めた言い方だが、この結果が決して偶然ではないとスタッフの高田は確信していた。
「いままで何人もの生徒を見てきましたが、須永君ほどスタッフの助言を真摯に聴き入れ、実行に移していた生徒はいない。そう断言できます。スポンジが水を吸収するように、彼は我々スタッフの助言を素直に受け入れ、自分の勉強の糧にしていきました」
試験結果だけ見ても、彼の苦労を計り知るのは甚だ不可能だと言える。
バスケットに捧げた高校三年間。高校最後の夏が終わり、周りが受験モードに切り替える中、須永は本腰を入れられずにいた。あと1週間したら始めよう。いや、2週間。なんなら2学期に入ってからでいいや。そんな調子で、受験勉強のスタートがどんどん遅れていった。
迎えたセンター本番。5教科7科目で64%。悪くない数字だった。受かりそうな高崎経済大を筆頭に受験プランを組む。結果は惨敗。夏のツケが回ってきた。そんな気がした。受かっていたのはセンター利用の白鳳大のみ。このまま白鳳大に進学するのか? いや、それは自分のプライドが許さない。
このまま進学したら絶対に後悔する。浪人させて欲しい。両親に頼み込んだ。
3月末の浪人生向け説明会当日。飼っていた愛猫が静かに息を引き取った。愛してやまなかったペットの死。その出来事が、心臓を鈍器で殴られたかのような鈍い痛みを須永の心の奥底に残していった。
説明会に向かう車内で、彼の視界は滲んでいた。このまま引き返したい。そんな思いにも駆られた。
いや、ここで頑張らなくてどうするんだ。もうやるしかない。もう一年死ぬ気でやると決めたじゃないか。
この日から、まるで人が変わったかのように、須永は新たな心持で勉学に励んでいく。父親の母校でもある法政大学を第一志望に据え、本格的な予備校生活が始まった。
順調に受講を進めつつ、定期面談で言われたアドバイスを1つ1つ聴き入れ、自身の勉強に取り入れていった。定期面談のほか、何度か開催する勉強会の内容も、自分のモノにしていく。
「英単語はただ闇雲に単語帳の意味を暗記しても意味がないと、高田先生に言われたのが印象的でした。いまだにcurrencyという単語の話が頭に残っています(笑)」
早い段階から、日曜日も積極的に登校。高田に言われたように、リスニングの訓練も毎日欠かさずこなしていく。疑問が湧いたら、必ず質問して解決していく。階段を1段1段上るように、着実に努力を重ねていった。
「B組の長文読解と金谷先生の日本史が、個人的にかなりよかったです。1度授業で扱った英文を、内容と構造を意識しながら徹底的に音読して、自分の血肉にしてきました。今思えば、構文Ⅳの例文暗記テストのおかげで、英文を構造的に読む癖が付いた気がします。日本史は金谷先生の話も面白いのですが、何より授業中の板書が役に立った。あれを超える日本史の授業はないといっても過言ではないと思います」
4月からの順調なリズムに陰りが見えはじめたのは、大学に進学した友人と夏に再開した時だった。楽しそうなキャンパスライフ。自分は浪人生活。飲み会やサークル活動など、大学生活を謳歌している友人とは逆に、来る日も来る日も予備校に通う自分。そのギャップを、否が応でも感じてしまう。浪人している自分への気遣いが余計に須永の心を痛めつけていく。
お盆休み中の友人との出会いが、その時の会話が、小さなしこりを須永の心に植え付けていった。気にしないようにしていても、気になってしまう。
そのしこりを取り除いてくれたのは、とある人気バンドだった。たまたま聞いていたラジオ番組に、野田洋次郎の歌声が響き渡る。彼らの奏でる音楽が、野田洋次郎の発する1つ1つの言葉が、彼の心に染み込んでいく。
今は前に進もう。そう決意した瞬間だった。
11月の河合塾センタープレ。3教科合計で88%。目に見える結果が出た。文句ない点数だった。やってきたことは間違いじゃない。この模試結果がそう思わせてくれた。
約10か月の浪人生活の末、迎えたセンター本番。前日の緊張とは裏腹に、試験会場の奇妙な空気が、次第に須永の心を落ち着かせていった。
「センター当日に英単語帳の単語クイズを出し合っている周りの受験生を見て、唖然としました。今日が本番だぞ? 一年間の集大成のこの日に、なんでこの人たちは暢気に単語クイズなんかやっているんだろう? おそらく進学校の連中ではなかったと思います。その人たちを見ていて、だんだんと緊張が和らいでいきました」
1科目目の日本史。迷った問題が1問だけ。あとは全部いけた。確かな手応え。よし。
2科目目の国語。難しい感じはしない。いつも通りの感触。
3科目目の英語。休憩時間に洋楽を聴いていた。試験直前まで耳を鍛え続けようとした。特にリスニングは過去一の感触。今まで以上に英語が聞き取れた。筆記もまずまずの出来。
結果は上述の通り、過去最高の出来だった。※ちなみにリスニングは46/50!!!
センター利用私大の発表日。不思議にも、出願したいくつかの大学の合格発表が、1日に集約されていた。自己採点結果で受かっているのは分かっていたが、それでも発表時刻が近づくにつれて自然と鼓動が速くなっていた。手には汗が滲んでいた。
家のパソコンで結果を見る。
合格。
ああ、よかった。大学に行けるんだ。嬉しさよりも安堵のほうが大きかった。
母親の目には涙が浮かんでいた。少なくとも須永にはそう見えた。いつもはもの静かな父親も、この時ばかりは嬉しそうに見えた。
~受験を終えて~
「海外旅行したいですね。アメリカに行って、NBAを生で見てみたい。将来のために、TOEICも受けてみようかな、と思ってます。バイトも楽しいですけど、なによりサークルでバスケしてる時が一番楽しいです」
<高田より>
1年間本当にお疲れさまでした。睡魔と格闘していた時期もあり、ほぼ毎日眠そうな様子でしたが(笑)、それでも約10か月間よくやり抜いたと思います。説明会当日にそのような悲劇があったとは知らず、それを胸の奥に秘め、毎日机に向かうとなると、並大抵の精神力では到底できないことだと思います。いまは思う存分自分のやってみたいことに挑戦してみてください。浪人生活で培った精神力こそが、単なる知識なんかよりも、この先の人生を歩んでいくうえでの礎になるはずです。これからの飛躍に期待しています。帰省した時には校舎に顔を出してください。スタッフ一同お待ちしています!